「イギリスの大学」と聞くと、どんなイメージがありますか?
まず思い浮かびやすいのは、オックスフォードやケンブリッジなどの大学でしょう。
1901-2021年にイギリスでノーベル賞を受賞したのは、138人。そのなかでも、医学と生理学が17人、物理と化学でそれぞれ8人が受賞しました。
こうして見ると、自然科学分野に強そうですが、イギリスの大学は実にさまざまなコースがあります。
日本ではあまり耳にしないようなコースもあるでしょう。
ここでは、私自身が選んだ社会行政学(Social Policy and Administration)について振り返ります。
社会行政学を選んだ背景
キリスト教系の学校に通っていた背景もあり、総合の時間は社会や貧困などについて考える機会が多かった気がします。
そんななか、学校の卒業生で国際関係学を学んだ方が、特別講座開いてくれる機会がありました。
その内容の面白いこと!!そこから、社会のシステムに関心が向くようになりました。単純に、興味があったんです。
「それなら国際関係学を選ぶべきじゃ?」と思いますよね。実は最初から社会行政学を目指していたわけではなく、国際関係学も視野にいれていたんです。
まず、イギリスの学位レベルに入学するときには、日本の高校を卒業しただけでは入学資格がありません。その資格を得るためには、まずファウンデーションコースというものを通らなければいけないのです。
そこで、ファウンデーションコースはもちろん、国際関係学や社会・社会政策学が学べる大学をまず探しました。
そしてprospectus(学課案内)を読んでいくうちに、社会学・社会政策コースの内容の方が、惹かれるものがあったわけです。
心に導かれるままに、こうして社会学・社会政策を学べる学部を選ぶことにしました。
少しでも興味のある分野なら、一度気になる大学の学科案内を読むといいでしょう。同じようなコースでも、提供しているユニット(モジュール)が異なることがありますよ。
University of BathのSocial Policy and Administration
残念ながら、このコースは私が在学中に終了となり、新規の学生は取らないようになりました。
いまは「BSc (Hons) Social Policy」となっているようです。それもそのはず、当時私を含めてこの学位コースにいたのは学年で5人だけ。
多くの場合は「Social Policy」「Sociology and Social Policy」、または「Sociology」を選んでいました。人気ではなかったことが一目瞭然です 笑。
なんで人気ではなかったのかというと、恐らく必須で取らなければいけない授業数が多かったから。
Social Policyなど人気の学位コースでも、Social policy and Administrationで課されている授業をオプションで取ることができるので、柔軟に好きなこと学べたわけです。
必須科目は1つだけで、あとの4つはオプションで選べるなどですね。私たちの場合は必須科目が3つでオプションは2つだったりしたので、自由はあまりききませんでした。
現在提供されているSocial Policy(社会政策)コースを見ると、当時からそこまで大きな変化はないようです。
【BSc (Hons) Social Policyの場合】
1st Year | Social problems and Social policy |
Social policy, welfare and the state | |
Understanding society: Britain in global context | |
Becoming a social science researcher | |
Classical sociology theory | |
2nd Year | Family matters: the sociology of the family and family policy |
Poverty, social justice and the state | |
Qualitative social research metods | |
Making and communicating policy: theories and practices | |
Quantitative data analysis | |
Society, welfare and policies in Europe | |
3rd Year | Social policy dissertation |
Social protection and welfare reform | |
Policy evaluation | |
その他、options |
例えば、1年生の1年間学ぶ「Becoming a Social Science Researcher」は、社会科学分野で、大学レベルではどのようにエッセイ(レポート)を書くのか、参考文献の参照の仕方、研究(データの取得・考察)方法学べる授業でした。
そのほかにも、国際関係学部や心理学部などの授業をオプションとして取ることも可能でしたよ。
2年生になるともう少し狭まった分野の授業になります。European Social Policy(ヨーロッパの社会政策)やFamily Policy(家族の社会政策)などが人気でした。私自身もFamily policyを選択。その後の研究のベースとなったので、あのとき授業をとっておいてよかったと心の底から思います。
3年次は、2つの選択肢がありました。1つは、そのまま3年生に進級すること。もう1つは、Placement Yearといって実際に社会に出てインターンシップをし、その経験が単位になるものです。
イギリスでは日本のように一斉新卒採用をしないので、なにかしらの経験を持っていると、卒業後の就職に有利になります。そのため、Placementで1年間社会に出た経験があるといいわけです。
私の学年では、半分ほどの学生がPlacementをしていた印象。私はそのまま3年生に進級したのですが、前年にPlacementをした学生たちが戻ってきて、一緒に卒業しました。
留学生でも学生ビザを使ってPlacementをすることもできるので、人気のオプションです。
社会行政学の学生としての毎日
私は自然科学分野の友人が多かったのですが、コースに取られる時間に大きな差がありました。
それというのも、自然科学分野では化学や生物学などなら実験室で研究をしたり、工学ならグループワークでプロジェクトを進める必要があったりするため。社会科学でも、もちろんグループワークなどはあるのですが、基本は自分で文献を読みあさることです。
講義とは別にセミナー(より少人数で議題について学び、話し合う授業)があるのですが、その授業に出る前には必ず指定された文献を読まなければいけなかったですし、試験・エッセイもそれらの文献が基本でした。だから、一人でいる時間が長いことが特徴なのです。
それを逆手にとって、遊んでいる友人もたくさんいましたが、卒業時には就職をするにしろしないにしろ、成績が重要になるので、あまり勉強をしないわけにもいきません。
みんな切り替えがうまくて、遊んでいるように見える友人も陰で物凄い量の文献を読んでいて、驚いたものです。
各学期(私たちの大学は2学期制でした)に5つずつユニットを選択し、それぞれ2時間の講義と、1時間のセミナーという構成でした。つまり、授業という形のものに拘束されるのは15時間のみ。あとは自学なのです。
自分なりにスケジュールを組めるのはとても良かったのですが、自分を律さないといけない部分もあるので、計画性を持つスキルが求められたように思います。
また特筆すべきは、私の大学の社会政策科学部に入学する学部生たちは、90%ほどがイギリス人だということです。国際的な観点でものごとを見るようになるのは、最終学年から大学院あたり。実際に、大学院ではイギリス以外の国からやってきた留学生が多かったです。
人生で大事な友人に出会えたコース
さて、今振り返ってみて、このコースに入って良かったのか?と考えると、「入って良かった」です!
私の恩師にも、今でも連絡を取り合うような友人たちにも、このコースに入ったから出会えました。社会学や社会政策に少しでも興味があるのなら、ぜひオススメしたいコースです!
今回は私自身がどうして社会行政学を選んだのかを振り返りました。専攻を決める方法はいろいろあるかと思いますが、参考になれば幸いです。